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ラッセルの幸福論を英語で読んでみよう!

投稿日:2016年11月28日(月)
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お久しぶりです。結構寒くなってきましたね。

今回の記事では上の写真(Wikipediaより引用)に写っているバートランド・ラッセル(Bertrand Russell)というイギリスの哲学者(数学者などでもありますが、とりあえず哲学者としておきます)が書いた『幸福論』を題材に英語の解説をしつつ、幸福についての一つの考え方を紹介することを目指します。哲学者などというと難しい話かと思われるかもしれませんが、話の内容そのものは単純ですのでリラックスしてお読みください。

バートランド・ラッセルは哲学者、論理学者で、ウィトゲンシュタインというそれまでの哲学に多大な影響を与えた人物の師匠というのが私の持つ個人的なイメージです。ただ調べてみると、ラッセルは教育や社会思想の方でも活躍したそうです。1950年にはノーベル文学賞を受賞していますし、そちらの面でも才能豊かな人物でした。羨ましい限りです。

さて、そんなラッセルが書いた『幸福論』ですが、正直に申し上げますと、私は最後まで読んだことはありません。もっと言いますと最初すら読んだこともなく、読んだのは「仕事」という章だけです。この本ですらつまみ食いなわけですけれども、ずいぶん前に読んだこの本のあるセンテンスを電車に乗っている時にふと思い出して、「確かにそうだなあ」としみじみ思いました。原文は英語ですし、英文つまみ食いのよい題材になるのではないか、そう思って今回記事にした次第です。

では早速その原文を読んでみましょう。

In some work, though by no means in most, something is built up which remains as a monument when the work is completed. (…) The work of construction (…), when completed is delightful to contemplate, and moreover is never so fully completed that there is nothing further to do about it. The most satisfactory purposes are those that lead on indefinitely from one success to another without ever coming to a dead end;

原文は『The Conquest of Happiness』から引用しました。(…)は省略を表しています。最後がセミコロンで終わっていますが、表記ミスではなくここで区切りました。

一文ずつ解説

In some work, though by no means in most, something is built up which remains as a monument when the work is completed.

日本語訳

いくつかの仕事においては、仕事がやり遂げられる時に一つのモニュメントとして残る何かが築かれる。もっとも、多くの仕事においてはそうではないが。

単語・熟語

though : もっとも〜だが
by no means : 決して〜しない

構文

though by no means in mostの部分がちょっとわかりにくいかもしれませんね。まずはここのthoughですが、これは「もっとも〜だが」という意味で、補足的に言葉を付け加える表現です。

ex)I found a bar, though(,) it was closed.
バーを見つけたんですよ、もっとも閉まっていましたが。
(ウィズダム英和辞典より引用)

この例文を見るとthoughの意味がよりわかるのではないでしょうか。

次にin mostの部分ですが、これは熟語でも何でもなく、ただmostの後ろにworkが省略されているだけです。したがって、though by no means in mostは「もっとも、多くの仕事において決して〜ない」となります。

ただ「〜」に当たる部分がthough by no means in mostには見当たらないですよね。実はここでは主節であるsomething is built up which remains as a monument when the work is completedが隠されているのです。

In some work, though (something is) by no means in most (built up which remains as a monument when the work is completed), something is built up which remains as a monument when the work is completed.

上の括弧内が隠されているものです。見てわかるように文としてはよくないですよね。それは同じことが何度も繰り返されているからです。英語ではこのように同じことが繰り返される場合省略します。先のin most workも同じ理由で省略されています。

省略を見抜くことは読解において避けては通れませんので、多くの英文に触れて省略を見抜く力を養いましょう。英文つまみ食いでは以前省略について解説しましたので、そちらも参考にしてみてください。

驚きの省略を含む早稲田の英語を英文解釈してみましょう

さて、これでthough by no means in mostは解決しましたが、その後のwhich remains as a monumentもやや曲者ですね。この部分だけ見ていると一体何が起こっているのかがわからず混乱すると思います。

先に答えを言ってしまうと、これは関係代名詞のwhichからなる関係詞節で、先行詞はsomethingです。基本的に先行詞の直後に関係詞が来るのですが、今回のようにsomething which remains as a monument is built upとなると主語が長くて頭でっかちな文になってしまいます。英語はこのような不格好な文を嫌いますので、これを避けるために関係詞節を後ろに持っていくのです。

(…) The work of construction (…), when completed is delightful to contemplate, and moreover is never so fully completed that there is nothing further to do about it.

日本語訳

建築という仕事はそれがやり遂げられた時にじっと見つめて楽しむことができ、その上これ以上すべきことは何もないというほど完全にやり遂げられることは決してない。

単語・熟語

contemplate : を熟考する/想定する/じっとみつめる、凝視する

構文

when completedとなっていますが、ここでもまた省略が行われています。その省略を補うとwhen the work of construction is completedとなります。これまでと同様、同じことを繰り返さないように省略されているのですが、be動詞も一緒に省略されていることに注意してください。whenだけでなくifやthoughなどが導く副詞節内では、主節の主語と同じ主語(今回の場合the work of construction)、そしてbe動詞は省略されるという規則があり、今回はこの規則に基づいてbe動詞も省略されているのです。

to contemplateは副詞的用法の不定詞です。delightfulという感情の原因を不定詞によって表しています。例えば、Nice to meet you. でも同じ不定詞が使われていますね。不定詞については「もう怖くない! 長文読解における不定詞を攻略!」で詳しく解説しましたので、興味のある方はそちらを参照してください。

もう怖くない! 長文読解における不定詞を攻略!

and moreover以下で使われているのは受験でおなじみのso…that〜「あまりに…なので〜だ/〜なほど…だ」ですね。受験で頻出であるこの構文ですが、実は「あまりに…なので〜だ」という訳で覚えているとたまにうまく訳せないことがあります。今回の文はまさにそうですね。「(建築という仕事は)あまりに完全にやり遂げられることが決してないので、それ以上すべきことは何もない」と訳してしまうと意味が変わってきてしまいます。今回のように否定文になると「あまりに…なので〜だ」という訳が使えなくなってしまうので、汎用性の高い「〜なほど…だ」で覚えておきましょう。

The most satisfactory purposes are those that lead on indefinitely from one success to another without ever coming to a dead end;

日本語訳

最も満足できる目的とは、絶対に行き止まることなく、一つの成功から次の成功へといつまでも続く目的である。

単語・熟語

indefinitely : 無期限に、いつまでも続く
lead on to : に通じる
ever:[否定文で](未来について)これから先絶対に〜ない、(過去について)これまで〜ない、(現在について)いつもは〜ない
dead end : 袋小路、行き止まり、行き詰まり

構文

thoseはpurposesです。関係詞節や前置詞句などで修飾されている場合、単数ならthat、複数ならthoseで置き換えます。

ex)The climate of Japan is milder than that of England.
日本の気候はイギリス(の気候)より温暖だ。
(デュアルスコープ総合英語より引用)

この文、もしくはこれに似た文を既に見たことがある方はいらっしゃるでしょう。受験でよく聞かれるところですね。「日本の気候はイギリスより温暖だ」という日本語につられて、that ofを書かない方が多いので注意しましょう。

最後に

ラッセルのこの考え、なかなか当たっているのではないかと思いました。皆さんの人生においてはどうでしょうか?

言ってみれば英文つまみ食いも同じ建築物ですよね。何もないところにサイトを建て、それを眺めて楽しんでは記事を更新することによって改良し、また眺めて楽しんで……。これを繰り返すわけです。ただちょっと眺める時間が長すぎたんですね。それで更新頻度が遅くなったと私は思うのです。

やや話は逸れますが、今回の記事を書いていてラッセルのこの話がPDCAサイクルに似ていると思いました。

PDCAサイクルとは、
1.Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
2.Do(実行):計画に沿って業務を行う。
3.Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
4.Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。
(Wikipediaより引用)
をグルグル繰り返していくことです。
1024px-pdca_cycle-svg
(Wikipediaより引用)

ラッセルの話をこのPDCAサイクルに置き換えてみますと、
1.Plan : 建築物の設計図を考える。
2.Do : 実際に建ててみる。
3.Check : 完成した建築物を眺めて楽しむ。
4.Act : 改善点を探して修正しつつ、Planへ活かす。

ただPDCAサイクルと言ってしまうとどうも幸福になれる気がしませんね。PDCAサイクルは効率を意識した機械的な手続きのような響きがあるからでしょうか。私個人の意見ではありますが、幸福は効率や機械的といった言葉から遠く離れたところにあるというイメージがあるからかもしれません。

PDF版はこちらです。

※今回の記事、特に日本語訳を作成するにあたって、安藤貞雄氏が翻訳した『幸福論』岩波文庫を参考にしました。

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