今回は長文読解で現れる不定詞を中心に説明していきます。
本記事は文法用語が多くなかなか慣れない方には難しく感じられるでしょうが、文法用語を覚えることでこれまでよりも辞書がより詳しく理解できるようになりますし、内容が整理されます。わからない文法用語は「英文つまみ食い」の記事を参考にするなりインターネットで検索するなりして、頑張ってマスターすることをおすすめします。
不定詞は中学校で学ぶので高校生の方は当たり前のように知っていると思います。しかしそんな基礎事項である不定詞、意外と苦戦している方も多いのではないでしょうか?
かく言う私も非常に苦戦しました。どうやって処理するのが得策なのかと考え、辿り着いた結果が今回解説する内容となっております。
まず不定詞には三つの用法があるのはよろしいでしょうか? それは名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法です。そしてそれぞれの用法からまた細かく派生して、例えば形容詞的用法のSV関係……という具合に結構複雑です。確かに覚えるのは大変ですが、一度覚えてしまえば不定詞は全く怖くありません。というのは不定詞は完全に理詰めで処理できてしまうからです。
ex)We took a taxi to be in time for the concert.
例えば、上の文を理解する時、私達は最初に構文を把握します。
(S)[We] (V)[took] (O)[a taxi] .
このように英文解釈できますね。< >は副詞句を表しています。なぜこの部分が副詞句だとわかるのか、それは既にSVOという文型が成り立っていて、明らかに不定詞句がSVOOのOになったり、SVOCのCになったりすることはないからです。文型は基本的に動詞によって決定されるという話でした。したがって不定詞句to be in time for the concertは余計なもの、つまり副詞句なのです。
副詞の働きをする不定詞とは、副詞的用法の不定詞です。副詞的用法のうちのどの訳し方が適切かを考えますと、「目的」が文意に合いそうだとわかります。よって訳は「私達はコンサートに間に合うようにタクシーに乗った」です。
このようにして不定詞の訳は決定されます。この順序を以下にまとめておきましょう。
(1)英文解釈をし、不定詞が名詞句、形容詞句、副詞句のうちのどれなのかを調べる。
(2)何の用法なのかがわかったなら、その用法の持つ訳し方の中で最も適切な訳し方(今回なら目的)を採用する。
基本的にこの流れで不定詞を訳すことができます。とても機械的ですよね。そういうわけで一度三つの用法とそれぞれの用法の複数の訳し方(例えば副詞的用法なら目的)を覚えてしまえば、不定詞は非常に簡単なのです。
ただ、それぞれの用法の訳し方はそれなりに種類があるので、一度に全部覚えるのが大変な方は長文読解でよく出てくるものだけを覚えるとよいでしょう。今回の記事ではできるだけ多くの訳し方を解説しますが、特に長文読解で出やすいものについては明記しておきます。
名詞的用法
名詞的用法には三つの訳し方(同格については形容詞的用法に入れる場合もあります)がありますが、要は名詞と同じです。これだけ知っていれば名詞的用法はマスターしたと言っても過言ではないでしょう。
(1)S, O, C
To speak English is fun. (S)
英語を話すことは楽しい。
I want to swim in the sea. (O)
私の夢はパイロットになることだ。
My dream is to be a pilot. (C)
私は海で泳ぎたい。
それぞれ例文を確認して頂ければ問題ありません。
(2)形式主語、形式目的語
It is fun to speak English. (It=to speak English)
英語を話すことは楽しい。
I found it difficult to make a speech. (it=to make a speech)
スピーチ[演説]をするのは難しいとわかった。
これも形式主語、形式目的語を知っていれば難しくないでしょう。SやOが長くなってしまうので、itを代わりに置いているだけです。
(3)同格
「名詞+名詞は同格」は「【第4回】英語の長文で頻出の「名詞+名詞」という同格を見破ろう!」で解説しました。このルールは不定詞になっても変わりません。
He made a promise to come back to me again.
彼はもう一度私のところへ戻ってくるという約束をした。
promiseとto come back to me againが同格になっています。
名詞的用法には三つの訳し方があると解説しましたが、最初に書いたように名詞的用法は名詞と同じと考えてしまえば大丈夫です。
形容詞的用法
中学校では「〜するための」と訳しましょう、というように教わっているのではないでしょうか? 私はこのように教わったのですが、これでは全く訳せませんでした。形容詞的用法で重要なことは訳そのものを覚えるのではなく、SV関係、VO関係を丁寧に把握していくことです。そのために関係代名詞から考えた方が最初の頃は理解しやすいのではないかと思います。
(1)SV関係
He has a lot of friends to help him.
彼には自分を助けてくれる友人がたくさんいる。
関係代名詞を使って書き直してみますと、
He has a lot of friends who help him.
となります。つまり、形容詞的用法の不定詞が修飾するfriendsが不定詞の意味上の主語となり、ここにSV関係が成立するわけですが、この説明がさっぱりわからないという方は関係代名詞に置き換えられると理解しておきましょう。
次のVO関係でも同じことですが、わざわざ関係代名詞に置き換えるのは「何が(誰が)何を(誰を)どうしているのか」を明確にする必要があるからです。もちろん慣れてくればこのようなことをしなくとも自然に読解できるようになりますが、最初のうちはこの「何が(誰が)何を(誰を)どうしているのか」をうやむやにしないでください。ここを適当にやってしまうと形容詞的用法がどういう仕組みになっているのかがわからず、とりあえず「〜するための」と訳してよくわからないまま通り過ぎていくことになります。
形容詞的用法は仕組みさえわかってしまえば読解できるので、最初のうちは丁寧に関係代名詞に置き換え「何が(誰が)何を(誰を)どうしているのか」を把握しましょう。
(2)VO関係
I must buy a magazine to read in the train.
私は電車内で読む雑誌を買わなければならない。
VO関係の場合でも関係代名詞に置き換えることができますが、SV関係の場合と異なり関係代名詞の導く形容詞節内の主語が明記されていません。この場合は自分で補わなければいけないのですが、これにも一定のルールがあります。for+名詞という形で不定詞の意味上の主語が示されていない時、その不定詞が属する節の主語が意味上の主語となります。
ただこのように書いてもわかりにくいことこの上ないので、順に解説していきましょう。まずは意味上の主語という言葉についてです。
It is natural for him to say so.
彼がそう言うのは当然だ。
意味上の主語というのは五つの文型に現れるSのことではなく、不定詞や分詞(現在分詞、過去分詞、分詞構文)、名詞などで表される行動に対する、動作主のことを指します。
例えば、上の例文ではto say soという不定詞によってsay soという行動が示されています。この行動をするのは誰か(つまりこの行動に対する主語は何か?)と問われれば、himと答えます。これは先程書いたように、不定詞の意味上の主語はfor+名詞で示されるからです。
しかし、例文I must buy a magazine to read in the train.のように、for+名詞で意味上の主語が示されていない場合もあります。この場合、不定詞の意味上の主語は、
(ⅰ)一般的な人々など、文を読めば明らかにわかるもの。
(ⅱ)その不定詞が属する節の主語と同じ。
のどちらかとなります。今回は(ⅱ)で、不定詞to readが属する節(節は主節一つですから文とも言えます)はI must buy a magazine to read in the train.です。したがって、意味上の主語はIとなります。
It is important to have a good sleep.
十分な睡眠をとることは大切だ。
この例文の場合、(ⅰ)ということで意味上の主語はこの文では示されていない人々一般です。
意味上の主語はわかりましたか? 意味上の主語についてはもっと詳しい話がありますが、それについては英文冒頭解説の方で随時勉強して頂けると助かります。
さて、不定詞に対する意味上の主語がわかったところで、再度おさらいをしておきましょう。
(ⅰ)for+名詞によって不定詞の意味上の主語が示されている場合にはそれに従う。
まずはfor+名詞によって不定詞の意味上の主語が示されていないかどうかを調べましょう。もしそれが見つからなければ次のステップです。
(ⅱ)一般的な人々など、文を読めば明らかにわかるもの。
(ⅲ)その不定詞が属する節の主語と同じ。
これらのいずれかに当てはまるので、その都度臨機応変に処理していきましょう。
複雑な話になってしまいましたが、これは一連のプロセスを丁寧に書いたからです。慣れてしまえば、ここまで丁寧に考えなくとも簡単に意味上の主語を見破ることができます。ただ慣れないうちはこのプロセスを大事にし、不定詞にも主語があるということを意識しておいてください。これを意識するのとしないのとでは全然違います。
ここまでは不定詞の意味上の主語を見分けるための話でした。私は最初に不定詞を関係代名詞に置き換えることができると書きましたが、そのためには不定詞の意味上の主語を把握していなければなりません。なぜなら関係代名詞が導く形容詞節内の主語は不定詞の意味上の主語だからです。
今回の例文I must buy a magazine to read in the train.を関係代名詞を用いて書き直してみますと、不定詞の意味上の主語は先の(ⅲ)よりIですから、
I must buy a magazine which I will read in the train.
となります(Iが繰り返されるので基本的に不定詞が好まれます)。ちなみにHe has a lot of friends to help him.のようなSV関係の場合、意味上の主語はfriendsです。
私がわざわざ関係代名詞に書き直すことをおすすめするのは、関係代名詞なら訳し方を知っているから、そして「何が(誰が)何を(誰を)どうしているのか」を把握する癖をつけてもらいたいからです。
(3)time, way
time, wayと書きましたが、他にもあります。ただ今のところはこの二つだけ押さえておき、後々長文を読んでいく過程で他のも覚えていきましょう。
time, wayは関係副詞を用いて書き換えることができます。
This is the best way to master English.
これが英語を習得する一番よい方法です。
これを関係副詞を用いて書き換えてみましょう。まずは不定詞の意味上の主語ですが、ここでは一般的な人々です。したがって、
This is the best way we master English.
となります。wayとhowは一緒に使えませんので、書くのはwayだけにしておきましょう。
少々長くなってしまいましたが、形容詞的用法についてはこれで終わりです。この関係代名詞、関係副詞に置き換えるという考え方がわかると、次のような問題が理解できるようになります。
He has no friends to talk to.
He has no friends to talk.
彼には話しかける友達がいない。
どちらの文が正しいでしょうか? 関係代名詞に置き換えてみますと、今回は(ⅲ)のケースですから、
He has no friends whom he talks to.
となります。toがないと文法的におかしいことが明白ですよね。なぜならtalkは「〜に話しかける」という意味では自動詞で、前置詞toを必要とするからです。
こういった問題も関係代名詞に置き換えれば簡単に理解できます。
副詞的用法
こう書いてしまうと批判もあるかもしれませんが、長文読解で出てくる副詞的用法のうちの大半は目的、結果で訳せてしまいます。ですから最初の頃は目的、結果だけ覚えておけば問題ないでしょう。もちろん他の内容も問われることがありますので、最終的には(2)(3)も押さえてほしい内容ではあります。ちなみに、副詞的用法のtoを辞書で調べるとここに書いてあるのはごく一部であることがわかると思いますが、基本的にこの三つで事足りますのであまり気にしないでください。自分のレベルに応じて、その都度知識を増やしていけばよいでしょう。
(1)目的、結果
一般的な文法書では目的と結果を分けて解説していますが、場合によっては、目的、結果のどちらで訳しても意味が通じることがありますので、慣れてしまったら細かく分類する必要はないでしょう。
基本的には目的で訳し、意味が通じなければ結果で訳すとうまくいきます。目的は「〜するために」、結果は「…して(その結果)〜」と訳しておけば問題ありません(〜の部分が不定詞にあたります)。
ところで文法書では、目的の不定詞の行為は主語の意志によるもの、結果の不定詞の行為は主語の意志によらないと分類されています。もちろんこのように分類して解釈していくのもよいでしょうが、個人的には「まずは目的で訳し、駄目なら結果で訳す」と考えた方が速いと思います。
ちなみに私は普段、「…し〜」(toをandに置き換えるイメージです)と訳していますが、ここでわざわざ「まずは目的で訳し、駄目なら結果で訳す」ことをおすすめしたのは、和訳などで目的と結果の違いが問われる可能性がないとは言い切れないからです。現に文法書では分けて説明されているわけですからね。したがって、最初の頃は目的と結果を曖昧にせず分類できるように訓練し、分類が確実にできるようになってから「…し〜」と訳すようにしましょう。「…し〜」はやや邪道だと思ってください。
She went to the supermarket to buy some vegetables.
彼女は野菜を買いにスーパーへ行った。
彼女はスーパーへ行き野菜を買った。
ただし、in order toやso as toを用いて目的のニュアンスを強めている場合には目的で訳しましょう。
さてここからはそれほど長文読解では出てこないものではありますが、(2)(3)は一応知っておきたい内容です。
(2)感情の原因
その名の通り、感情の原因を表す不定詞です。当然、感情を表す語句とともに使われます。「〜して(感情)」と訳しましょう。
I am very glad to see you.
あなたにお会いできてとても嬉しいです。
この例文における感情を表す語句はgladです。このように感情を表す語句とともに使われる不定詞は感情の原因を表すと考えてください。
感情を表す主な語句を以下にまとめておきます(デュアルスコープ総合英語より引用)。
angry(怒った), glad[happy/pleased/delighted](嬉しい), sad(悲しい), sorry(残念で、すまなく思って), upset(うろたえた)
(3)判断の根拠
これもまた名前通り、判断の根拠を表す不定詞です。通常、must(〜に違いない)やcannot(〜するはずがない)、感嘆文と一緒に使われます。「〜するとは、〜するなんて」と訳しましょう。
She must be rich to buy that expensive coat.
あの高価なコートを買うなんて彼女は金持ちに違いない。
She must be richと判断した根拠がto buy that expensive coatによって示されています。
非常に長くなってしまいましたが、今回の内容を理解して頂ければもう不定詞は怖くありません。この記事を読んで不定詞を簡単に処理できるようになって頂けたら幸いです。
例文は特に明記されていない限りデュアルスコープ総合英語から引用したものです。
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