今回は実際に早稲田で出題された英語の中から、簡単には気づけない省略を見抜いていきます。最初に省略される条件を確認しておきましょう。
省略の条件
①全く同じものが繰り返される。
②書かなくてもわかる。
この二つの場合に省略が起きます。もし構文が把握できない文に出会った時には省略を疑ってみてください。省略される条件は①、②の場合だけですから、省略されている箇所を補うためには前文を読んでみたり、あるいはわざわざ書く必要がないと思われるものを考えてみたりしてみてください。ちなみにこちらの二文目でも省略が起きています。
実際に出題された英文
ではこれを基に次の文の省略を考えてみましょう。
Today’s researchers agrre that genes play a role, but to what degree is intensely debated.
今日の研究者達は遺伝子が一役買っていると口をそろえて認めているが、どの程度の役割を演じているかは激しく議論されている。
(日本語訳は「早稲田の英語第5版」より引用」)
この英文は2003年度早稲田大学スポーツ科学部の[1]で出題されました。
まずbut以下の文がおかしいと思った方はいらっしゃるでしょうか?
to what degreeだけでは主語にはならないですよね。 to a certain degree「ある程度」のa certainをwhatにしたものが今回使われているわけですが、to a certain degreeにせよto what degreeにせよ名詞ではありません。どちらも副詞句です。そういうわけで、 to what degreeだけで主語にはなれないのです。
しかし等位接続詞butで結ばれている以上、to what degree is intensely debatedも完全文でなければならないのです。
実はこのdegreeとisの間に省略が行われているのです。
以下の文をご覧ください。
ex)By whom was the American Red Cross founded ? アメリカの赤十字社は誰によって創立されたのですか。
(表現のための実践ロイヤル英文法より引用)
今回のto what degreeもこの例文と同じです。前置詞+疑問代名詞(By whom)、前置詞+疑問形容詞+名詞(to what degree)という細かな違いはありますが、前置詞と疑問詞が結びつくケースと見れば同じ話であることがわかるでしょう。
これを踏まえると、but以下の文の主語には疑問文が埋め込められていると考えられませんか? そして文の要素(S, V, O, Cのことです)に疑問文が埋め込まれる時、その文のことを間接疑問文と呼びます。
したがって全体の構文は、SVO, but S(間接疑問文)VCとなります。
ところで間接疑問文自体も完全文です。to what degreeは副詞句ということでしたので、間接疑問文の中だけで考えると、SもVも足りません。つまり文の要素が一つもないのです。このように考えると、間接疑問文の中で省略されているのは完全文だと推測できます。
ここで省略を補うためにもう一度省略の条件を見てみましょう。
①全く同じものが繰り返される。
②書かなくてもわかる。
全く同じものが繰り返されるというのなら、直前に省略されたものがあるはずです。先程、完全文が省略されていると推測しましたので、直前を見てみますと、Today’s researchers agrre that genes play a roleと書かれています。完全文は二つあり、Today’s researchers agrre that genes play a roleとgenes play a roleですね。意味を考えると後者が適切だとわかります。したがって、以下のように文を復元できます。
Today’s researchers agrre that genes play a role, but to what degree genes play a role is intensely debated.
赤字が省略されていた箇所です。
英語の長文を読むにあたって避けては通れない省略を今回扱いました。たくさん勉強している方にとっても、省略を苦手とする方は多いのではないでしょうか? 是非、省略が起こる条件を覚えて長文読解、英文解釈に活かしてみてください。
今回参考にしたのは第5版ですが、既に第6版が出ているようです。
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